わんちゃん、ねこちゃんの体調変化に気付いてあげられるのは、やはり飼い主の皆さんです。「これくらいの変化で病院に行くなんて大げさかな…?」と思わず、すこしでも気になったらお越し下さい。
すべての動物においても「早期発見・早期治療」です。
「今日はちょっと食欲がない」「いつもより元気がない」そんな小さな異変に気付くのは、毎日一緒にいる飼い主さまです。大事に至らないためには、そのような異変をいち早く感知して、様子を見すぎずに受診することが大切です。一食でも「食べない」という症状がある場合、一日程度ご自宅で様子を見てもやっぱり元気がなければ、早急に来院してください。
毛艶やがない、脱毛がみられる、毛がべとつくなど気づきやすい変化もありますが、直接触ってみて、 かさぶたや腫れ、しこりなども確認してみましょう。
保険会社の統計によると保険金請求疾病ランキングの上位に常に入るのが耳の疾患です。 耳から悪臭がしたり、耳を掻いたり、頭を振ったりなどの様子が見られたら病院へお越しください。 おうちで耳のケアも大切ですが、 外耳炎や鼓膜の異常がないことを病院で確認しましょう。 綿棒などを耳道に入れるとわんちゃんが動いて逆に傷つけてしまう場合もあります。病院でケアの方法もレクチャーします。
涙や目やにが増えた時にはぜひご相談ください。 その奥に結膜炎や角膜症、ドライアイや緑内障など様々な病気が隠れていることもあります。短頭種は眼球が飛び出ていることや目の周囲に飾り毛があるわんちゃんは涙が多く涙やけを起こしやすいのでケアしてあげてくださいね。
わんちゃんの鼻は常に湿っています。「わんちゃんの鼻が乾くと調子が悪い」などと聞いたことはありませんか? それはあながち嘘でもないのです。寝起きや高齢犬では乾燥気味ですが、アレルギーや角化症、 自己免疫疾患性皮膚疾患などで鼻が乾燥す ることがあります。 さらさらとした鼻水 (運動時や興奮時)は心配ないですが、細菌やウイルスなど感染症、アレルギーが原因の時は膿の混じった鼻水が出ることもあります。
歯みがきの習慣を付けましょう。 どうしても嫌がる子にはデンタルケアのできるおやつをお薦めします。歯周病は多くのわんちゃんにみられます。 歯周病は歯が抜けるだけでなく、 失明や骨髄炎を引き起こすこともあります。 病気でなくとも口腔内が乾燥すると口臭を引き起こすこともありますが、口腔内の腫瘍や内臓疾患で口臭が発生する場合もあるので気になるときはご相談ください。 歯肉の色にも気を付けてあげましょう。 白っぽい場合は貧血や腎臓障害などの病気も疑われます。 ちょっとした変化がわんちゃんの健康状態を知るきっかけになります。 口元を触っても平気なように仔犬のころから歯みがき、 歯肉のチェックができるようしつけるのも健康を守る大切なことです。
爪切りは大切なケアの一つです。伸びすぎると爪が折れたり指を傷つけたりすることもあります。 仔犬のころから爪切りにも慣れさせておきましょう。 伸びた爪で耳を掻いて外耳炎を引き起こしたり、 人獣共通感染症である猫ひっかき病の原因となる「バルトネラ菌」 がわんちゃんの爪には常在しているので定期的に爪切りをしましょう。 最近では肉球のケアのクリームなども様々販売されるようになり、飼い主の皆さんの意識の高さを感じます。 ただ、 散歩の後に濡れタオルなどで肉球を拭きすぎるとひび割れを引き起こすので拭きすぎにも注意してあげましょう。 夏は肉球や指の間のやけど、 冬は乾燥によるひび割れに注意してください。
排泄物はわんちゃんの健康を見守れる大切な物です。 排尿回数は仔犬から成犬にかけて減っていき、 高齢になると増えます。日頃の排尿回数、量を把握しておくことが非常に大切です。 尿の色が薄い、濃い、 茶色または血液が混じっているなどの症状がみられたらすぐお越しください。 尿にキラキラしたものがみられる場合も結石の可能性がありますので尿をよく観察してください。 便はにおいや固さに注意しましょう。 (フードを変えるとにおいや色は変化することもあります。) 便の色が黒い、 明らかな血便、黄色や緑っぽい色、白っぽいなど変化があればすぐお越しください。(便があればご持参ください。) 大腸が原因か小腸が原因かを判断する材料に、排便の回数が非常に重要になりますので回数の確認もお願いします。トイレに行くのになかなか排泄しない、排泄時に鳴くといった変化は痛みを感じているというサインです。 そのような場合もすぐお越しください。
ねこちゃんの場合摂取したタンパク質の約30%が皮膚や被毛の維持に影響しています。与えているフードのタンパク質が不足すると毛並みが悪くなります。 毛並みが悪いと感じられたらフードのご相談にも乗りますのでお気軽にお越しください。ねこちゃんは身体をなかなか触らせてくれない子もいるとは思いますが、直接皮膚に触れ、 かさぶたやしこり、 腫れがないかをチェックしてあげてください。
ねこちゃんは眼に入る光量を瞳孔の大きさを変えて調整していますが、明るさが変わっても瞳孔の大きさが変化しない、左右で大きさが違う場合は緑内障や網膜疾患、神経系の疾患などが疑われます。涙や目やにが多い、充血している、頻繁にまばたきをする、眼球が上下あるいは左右に細かく揺れている (眼振)などの症状がみられる場合もお越しください。
ねこちゃんの鼻はにおい物質が付きやすいように常に湿っています。少量の鼻水を常に出しています。 が、大量の鼻水や粘り気、色のある鼻水を出している場合や同時にくしゃみを頻繁にするようになった場合は病気のサインかもしれません。 気を付けて観察してあげて下さい。
わんちゃんの健康管理でも申し上げた通り、口臭や歯周病予防に歯みがきを習慣にしましょう。 ただ、わんちゃんより、ねこちゃんのほうがなかなか歯みがきをさせてくれない子が多いように感じます。その場合にはデンダルケアのできるおやつを用いてみたり、フードの見直しも必要かと思います。ねこちゃんはあまりよだれを垂らしません。 よだれを垂らしていたら口の中に傷、口内炎の有無、刺激物の摂取や誤飲の確認をしましょう。腎臓・肝臓の機能低下や神経症状の場合もありますのですぐご来院ください。ねこちゃんも小さいころからデンタルケアをはじめ、歯肉の色の確認ができるよう口元を触っても嫌がらないようスキンシップを通じてしつけていきましょう。
ねこちゃんの爪にも人獣共通感染症の猫ひっかき病の原因となる「バルトネラ菌」が常在していますので、定期的な爪切りはヒトへの感染予防のうえでも必要です。 おうちで出来ないねこちゃんは病院で爪切りが可能ですので連れて来てあげて下さい。 ねこちゃんの肉球の病気に 「形質性細胞足皮膚炎」というものがあります。これは肉球が柔らかなスポンジのように腫れます。特に何もなく治癒することもありますが、 肉球が腫れて膨らみ潰瘍を形成することがあります。 病因がほとんど解明されていません。 最近になって免疫系が深く関与していると考えられています。)ですので、有効な治療法が確立されていません。 ねこちゃんの肉球に変化を感じたら、 悪化する前にご来院ください。
わんちゃん同様ねこちゃんの排泄物も健康を見守る大切な宝物 です。 ねこちゃんの尿は鼻をつく独特のにおいがします。 このにおいがアンモニア臭がきつくなったり、甘酸っぱいにおいがきつくなると病気の可能性があります。 色にも注意しましょう。 濃い黄色やオレンジの場合は肝臓・胆嚢の疾患が、 赤色 (血尿)の場 合は膀胱炎、尿路結石、 茶色の場合は溶血 (赤血球が壊れること)を引き起こす疾患や中毒が、 透明・薄い色の場合は腎不全や糖尿病などが疑われます。 ねこちゃんは特に腎臓病や泌尿器の疾患にかかる子が多いです。 猫ちゃん用トイレもいろいろエ夫され、猫砂も尿を確認できるようにずいぶん進化しました。トイレ掃除の時にぜひ確認してみてください。 正常な便は拾い上げられる硬さで、持ち上げると猫砂はあまり付きません。 異物が混じっていないかなどもチェックしてあげて下さい。 軟便が見られるときはそのまま下痢になることが多いですし、トイレに何度も行くのに何も出ない、トイレの周りをうろつくなどの行動は便秘の可能性があります。 どちらも早急に原因を突き止めてあげましょう。
夏は皮膚病、食欲不振で来院されることが多いです。最近は室内飼いのワンちゃんが多いので、熱中症にかかる子もよくいます。外出時もエアコンは一定の温度に保つなど、温度管理に注意してあげてください。冬はネコちゃんの風邪が多いです。 気候や季節に対応できるよう、飼い主さまが快適な環境をつくってあげることが大切です。
ネコちゃんの腎不全は老齢期に発症しやすく、死亡率が高い病気です。多飲多尿や便秘、元気がないなど症状は様々です。院長はネコちゃんの腎不全診療を得意としています。何か気になることがある際にはお気軽にご相談ください。
当院では、将来的な交配や繁殖を希望されない方には、生後半年で去勢手術・避妊手術をおすすめしています。
手術を行うメリット・デメリット
メリットとしては、ホルモンバランスの変化によって、メスの場合は子宮内膜炎や蓄膿症の予防になります。オスの場合も、ホルモンバランスが変化すれば病気にかかりにくくなります。また、性格が少し温厚にもなります。デメリットとしては、ホルモンバランスの変化によって、肥満になる傾向があります。
肥満傾向がみられる場合は、食事療法で予防します。食事療法のご説明もしていますので、どのような食事があるかなどは、その際にご案内しています。
健康診断は、病気の早期発見が目的です。定期的にお越しください。ワンちゃんでいうと、狂犬病の予防接種やフィラリア予防で来られる春の時期に、一緒に健康診断として血液検査をするようおすすめしています。ほかの動物の場合でも、一年に1度は血液検査をしておくとよいでしょう。
診療にあたり大切にしていること
動物たちの病気を治すにあたり、いろいろなケースをご紹介して、飼い主さま一人ひとりにとってのベストな選択をしていただくことを、いつも心がけています。
飼い主さまにも動物たちにも、様々な事情があります。よって、獣医師側から「これが最高の治療です」と押し付けることはできません。獣医師にできることは、今までに得た知識と経験をもって、さまざまなパターンをご紹介することです。そして、制約があるなかで、この子にとって一番よい治療方法を考えていくことです。
高額な薬を使うケースや、延命治療になるかもしれないケースは、その都度飼い主さまにご説明しています。当院では、飼い主さまあっての動物たちと考えております。獣医師側で勝手な判断はせず、必ず飼い主さまの理解を得てから治療を進めています。